病院

電子処方箋の導入により医療DXのさらなる拡充へ。
中核病院として地域医療活性化の牽引役に

日本海総合病院 山形県酒田市

日本海総合病院は、統合医療情報システムの構築、医療DXを積極的に推進し、中核病院として地域医療にも尽力しています。

電子処方箋を導入した理由

導入を検討した背景と経緯を教えてください

当院は、医療安全や業務の効率向上を目的に医療DXに積極的に取り組んでおり、2020年度にオンライン資格確認をいち早く導入した経緯があります。電子処方箋は、オンライン資格確認の仕組みを活用したシステムということもあり、提供される機能も有用だと感じ、導入の検討を行いました。

病院長の島貫隆夫さん。

電子処方箋を導入しようと思った理由は?

第一に、併用禁忌や重複投薬の防止に効果があり医療安全につながると思ったからです。
例えば、これまでの院内の電子カルテによるチェックに加え、電子処方箋管理サービスにて併用禁忌や重複投薬が自動でチェックできるので、より精度の高い確認ができると思います。また、オンライン資格確認でも薬剤情報を確認することはできますが、これはレセプト情報であり1カ月程度のタイムラグがあります。これに対して電子処方箋はリアルタイムで処方・調剤情報を確認することができます。その効果は、既に地域で独自に進めてきた庄内地域医療情報ネットワーク「ちょうかいネット」での類似の仕組みで有用性を実感していました。電子処方箋を利用すれば、地域医療情報ネットワークに参加している地域の医療機関だけでなく、患者さんに紐づく情報として全国の医療機関や薬局で確認できるため、より意味があると感じました。

次に、患者さんの常用薬を容易に把握することができるようになるため、これまで口頭や実物で確認していた作業が不要になることで業務効率化につながると期待しています。

また、処方・調剤情報が把握できることは大規模災害やパンデミックが発生した際にも役立つと思っています。

管理課情報システム主査兼情報システム係長の佐々木邦義さん。

システム導入のプロセスについて

システム導入において苦労したことはありましたか?

電子処方箋の導入にあたって必要な作業は、オンライン資格確認の導入が済んでいることを前提にすれば、基本的には大きく2つと捉えています。施設で利用しているシステムの改修をシステム業者が行うこと、そして電子署名のためのHPKIカードに係る準備を行うことです。

先行導入ということもあり、導入作業開始当初はシステム業者も手探りだったため、HPKIカードリーダーの仕様やネットワークの構成など、検討や検証に時間を要しました。今ではシステム業者にも知見が蓄積されており、医療機関等向け総合ポータルサイト(現在の電子処方箋ポータルサイト)に新しい情報が順次追加されているので、よりスムーズに導入を進めることが可能だと思います。

病院改革推進室室長兼事務局調整監の池田恒弥さん。

導入にあたって配慮が必要なポイントはありますか?

システム改修では、薬品マスター、用法マスターなど処方箋に関連するマスターについて、電子処方箋のマスターと、当院が利用しているマスターとの紐付けを行う作業が発生しました。医療機関によって独自にマスターを構築していることが多いため、当院でもマスターの変更作業には少し大変な思いをしました。とはいっても、紐付け作業だけで何カ月もかかるというものではありませんから、作業が必要だという認識さえ持っていれば大きな問題にはならないと思います。

医師が電子処方箋を発行する際に、電子署名を行うためのHPKIカードが必要ですが、申請から取得までに一定の期間がかかるため、早めに発行申請をすることをおすすめします。

また、導入当初にシステム業者が用意しようとしたHPKIカードリーダーが、公開されている対応機種の後継機種にもかかわらず非対応であることが判明したことで、手配に時間を要しました。現在は、公開されている対応機種も更新されていますが、導入の際は該当機種がドライバに対応しているかをしっかりと確認すると良いと思います。

HPKIカードのカードリーダー。ズレると認証されず、またカードリーダーを金属のデスクの天板に水平に置くと干渉しあうため斜めに立てて使用。

電子処方箋の画面。

電子処方箋導入後の変化について

電子処方箋を導入したことで、業務の内容や流れはどのように変わりましたか

患者さんにとっての受診の流れは、これまでと大きく変わったところはありません。受付でマイナンバーカードを健康保険証として顔認証付きカードリーダーに置くと、「電子処方箋を利用するかどうか」を選択する画面が表示され、患者さんが電子か紙かを選択するようになっています。

電子処方箋を選択した患者さんには紙の処方箋の代わりに「引換番号」を印字した処方内容(控え)をお渡しします。患者さんがこの引換番号を薬局に提示すれば、薬剤師がオンラインで処方箋を確認して調剤を行います。
医師は、電子カルテの記入時に、処方箋の発行種類を「院内(紙)」あるいは「院内(電子)」のどちらかにチェックを付けるだけです。ちなみに、マイナンバーカードで受付をした患者さんの場合は、あらかじめ「院内(電子)」にチェックが入っており、それ以外は「院内(紙)」チェックが入っています。電子処方箋を利用した医師からは、「簡単だ」「抵抗感なく使えている」と聞いています。

円滑な診療のために、患者動線として患者からの質問等は受付で集約するようにしています。そのため、患者から電子処方箋についての質問を受けた場合、医師には「詳しい説明はしなくて良い、受付に引き継いで説明してもらうように」と伝えています。できるだけ診療の本来の流れを妨げたり混乱させたりすることのないよう効率化し、電子処方箋への移行がスムーズになるように配慮しています。

なお、現時点では電子処方箋に対応している薬局が限られているため、患者さんが訪れる予定の薬局が電子処方箋対応かどうかを確認する必要があります。受付時や診療中、診療後に確認を行い、もし患者さんが電子処方箋を選択していても、薬局が未対応の場合には、紙の処方箋に修正して発行しています。

電子処方箋について、患者さんにはどのように周知されていますか

患者さんの目につきやすいところを選び、ポスターやデジタルサイネージを複数箇所に掲示をしています。また、電子処方箋についての簡単な文書を作成し、主に受付の際に患者さんに案内するようにしています。

患者さんに渡すチラシ。

電子処方箋の周知・案内等の素材は、 厚労省HPよりダウンロードしご活用いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/denshishohousen_sozai.html

今後、電子処方箋に期待することは?

電子処方箋は、点ではなく面で広がっていく、つまり病院や診療所、薬局などあらゆる医療機関が導入し、処方情報を共有するネットワークが構築されることで価値が発揮される仕組みです。一部の医療機関だけが導入しても薬局が未対応であれば十分に機能しませんし、また多く集まれば集まるほど、医療安全を守る上で意味のある情報になっていきます。全国規模での電子処方箋の普及に期待を寄せています。

また、オンライン診療でも大いに活用できると思っています。

地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院

〒998-8501 山形県酒田市あきほ町30番地

TEL:0234-26-2001(代表)

http://www.nihonkai-hos.jp/hospital/

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