病院

院内全体で密なコミュニケーションにより運用を確立。
患者さんへの丁寧な周知により電子処方箋の利用促進へ

広島市立北部医療センター安佐市民病院 広島県広島市

広島市立北部医療センター安佐市民病院は、2022年5月に旧安佐市民病院の移転・再編し、広島県北西部の診療圏をカバーする中核病院として高度急性期・急性期医療を担っています。

電子処方箋を導入した理由

電子処方箋を導入しようと思った理由を教えてください

ITの急速な進捗により医療業界は大きく変化しようとしています。当院は2022年5月に現在地に移転し、移転後はデジタル化を推進しようという方針を決めていました。電子処方箋は、情報共有や医療安全という観点からも必要だと認識しており、この機会を良い機会と受け止めて電子処方箋の導入を決めました。当院は、先駆けて電子処方箋を導入しましたので、地域をはじめ他の医療機関のモデルになればとも考えています。

副院長の向田秀則さん。

導入を検討した際に、課題や懸念点などはありましたか?

移転後間もなかったため、移転に伴う外来全体の運用を安定化させる必要から医師、看護師、医療クラーク、医事課職員、皆で外来運用を考えるワーキンググループを立ち上げていました。電子処方箋は、このワーキンググループで検討することになりましたが、それぞれの部門が移転後の新しい運用に慣れてきたばかりでさらなる変化への負担の懸念もありました。そこで、安佐薬剤師会の協力も得て負担を分散させる運用を考えました。電子処方箋は、医師の業務だけでなく、たとえば、地域の薬局では電子処方箋の案内を行い、受付では患者対応や電子処方箋発行時に必要な資格情報を確認しておくというように、それぞれがやることを分担して協力することがコツかもしれません。
検討開始当初は不安もありましたが、デジタル化の推進にもつながりますし、医療の質が改善されれば患者さんのメリットも大きいですので、導入を進めていきました。

看護師長の原田美樹さん。

システム導入のプロセスについて

システム導入において苦労した点はどこですか?

システム導入においては、とにかくシステム業者と密にやりとりをして進めました。今ではシステム業者にも知見が蓄積されたと思います。
また、処方箋情報等を記録するための用法マスターの整備が必要でしたが、薬剤部やシステム業者と一緒になって対応しました。用法マスターの更新は、医療機関側からもシステム業者に対してしっかりと会話することが良いと思います。

医事課課長補佐の森﨑敬子さん。

院内での周知をどのように進めたのでしょうか?

電子処方箋の理解を深めるため、システム業者や当院の情報部門も加わり、皆で毎週のように話し合いをしました。話し合いでは厚生労働省のホームページの資料が役立ちました。厚生労働省のオンライン説明会も見てもらい、みんなで意見を突き合わせてどのように導入していくか意見交換をしました。
当院には、医師が約170名、看護師が約600名います。全職員では約1,100名です。全員が詳しく知らなくても問題はありませんが、少なくとも医師、医療クラーク、外来看護師、医事課の職員にはきちんと理解してもらわなければならなかったため、現場への説明をとにかく丁寧に行いました。さまざまな会議のたびに「電子処方箋が始まります」ということを繰り返し伝えるとともに、決定事項や訂正事項なども各部門にできるだけ早く情報共有するように意識しました。システム業者から電子処方箋のサンプル画面を提供してもらい、その資料を印刷して職員に共有するなど、できる限り導入後の様子をイメージしやすいように心がけた結果、職員にも少しずつ理解が広がっていきました。

電子処方箋導入後の変化について

電子処方箋を導入したことで、業務の内容や流れはどのように変わりましたか?

導入するまでは不安もありましたが、実際に導入して運用を始めてみると、従来の業務とそこまで大きな違いはないと感じています。

医事課の場合、業務の留意点といえば、処方箋情報を電子処方箋管理サービスに登録するために、枝番を含めた資格情報が必要なため、確実にオンライン資格確認をしておくことかと思います。あとは、患者さんが薬局に持参するものが紙の処方箋の代わりに処方内容(控え)の用紙になるだけ※ですので、今までと大きく変わらず、違和感もあまりありません。

外来診療でも特に負担は増えていません。医師の場合、HPKIカードをカードリーダーで読み取らせる、暗証番号を入力する、といった作業が紙の処方箋とは異なりますが、電子処方箋の場合は印鑑を押す必要がありませんので、むしろ作業のスリム化につながった部分もあります。今後、電子処方箋の導入が進んで希望者が増えれば、重複処方や禁忌薬の確認、コメントの記入による薬局とのコミュニケーションが活発になることで、より良い医療につなげられると思っています。

※処方内容(控え)の運用は、患者のマイナポータルでの処方内容の確認への慣れ等を踏まえた過渡的な措置(廃止時期未定)です。

HPKIカードのカードリーダー。

電子処方箋について、患者さんにはどのように周知されていますか

とにかく認識してもらうことが重要だと思い、院内に入ってすぐのところに大きなポスターを掲示するとともに特設ブースを設置し、電子処方箋に関する案内やマイナンバーカードの健康保険証利用に関する案内を集中的に行っています。また、顔認証付きカードリーダーの画面で処方箋の発行形態を電子処方箋にするか選択できるため、今は、患者さんに対してご利用の薬局が対応しているかを確認するようにしています。
患者さんの中には、「ニュースでこれからは電子処方箋になると聞いた」など、ご自身で情報を得ている方もいらっしゃいます。ただ、かかりつけ薬局が対応していないことで断念する患者さんもいたりしたので、これから薬局の導入も加速することを期待しています。
安佐地区の場合、現在は、患者さんが薬局に行って困らないように主に電子処方箋に対応している薬局で、患者さんに対して電子処方箋の案内を周知する流れにしていますが、地域全体で導入が進めばそのような対応も不要かもしれません。

配布するチラシ。

電子処方箋の特設ブース。

電子処方箋について、メリットを感じているのはどのようなことでしょうか

重複処方や禁忌薬のチェックは非常に重要ですし、電子処方箋の最大のメリットだと思います。これまでも医師がお薬手帳などを参考に確認していましたし、薬局でも薬剤師の方がチェックしてくださっていましたが、すべての薬剤情報がそろっているとは限らない状態でしたので、わからないこともありました。電子処方箋が導入されて、患者さんが使っている薬の情報が登録されるようになると、リアルタイムで処方情報が共有され、医療安全、医療の質の向上につながりますので、非常にありがたいことです。ポリファーマシーの解消に寄与して、医療経済が良くなることもあるかもしれません。

また、当院では初診の患者さんに対して、診察前に看護師が問診を取り、服薬状況の確認も行っています。重要とはいえ一定の時間を要する作業ですので、電子処方箋がさらに浸透してこのような作業が不要になれば、外来看護師の業務効率化につながると期待しています。電子処方箋をご希望の患者さんの場合は、今後、問診で服薬情報を引き出す必要がなくなりますので、電子処方箋を希望されるかどうかを問診票の項目に加えてあります。

大規模災害の発生時にも大きなメリットが得られるでしょう。クラウド上に登録された処方箋データがあれば、院内のサーバーが使えなくなったとしても情報を取得できます。これは患者さんにとっても非常に有益だと思います。

今後、電子処方箋に期待することは?

前述のようなメリットを享受するためにも、今後、電子処方箋の導入施設が増えて、さらに多くの処方情報が登録されることを期待しています。

電子処方箋は、移転直後の慌ただしい中でも無事導入できましたし、運用に関しても日常の業務に大きく影響するような変更はありませんので、戸惑うことはあまりないはずです。短期的な負担よりも、長期的なメリットのほうが明らかに大きいと感じます。少しでも多くの医療機関や薬局が電子処方箋を導入することで、ますます有用なシステムになっていくことを願っています。

広島市立北部医療センター安佐市民病院

〒731-0293 広島県広島市安佐北区亀山南1-2-1

TEL:082-815-5211(代表)

https://www.asa-hosp.city.hiroshima.jp/

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