病院

地域の中核病院として電子処方箋を積極的に運用し、医療DXを牽引。
多様な周知活動を通して、患者の利用を促進

公立岩瀬病院 福島県須賀川市

公立岩瀬病院は、電子処方箋のモデル事業として、全国に先駆け2022年12月に電子処方箋の運用を開始しました。運用開始時から、地域の中核病院として、リーダシップをとって地域の医療機関・薬局と連携し、患者向けに多様な周知活動を行うなど、地域一体となった電子処方箋の導入推進のために活動してきました。

運用開始までの流れ

導入を決めた後、院内にどのように周知しましたか?

まず医局会や職員向けの説明会などで電子処方箋を導入する意義やメリットを説明することで、導入のモチベーションにつなげました。職員(特に医師)にとっては、重複投薬や併用禁忌、直近の処方内容が確認できることで、患者さんの安全の確保や、医師の処方リスクの軽減にもつながるといったメリットが一番響いていたようでした。また、オンライン資格確認の導入のきっかけもそうでしたが、当院のある福島県須賀川地域は災害を経験しており、東日本大震災では当院も建物に大きな被害が生じ、2019年の大型の台風被害では実際にお薬手帳を流されてしまった患者さんがたくさんいらっしゃいました。危機管理の視点から、お薬の情報をデータで保管・管理できるということも、電子処方箋の大きなメリットと感じてもらえました。

病院長の土屋貴男さん。

(システム的に)導入する際の課題やハードルはありましたか?

特にありませんでした。当院では、患者さんの来院から処方までのフローをほとんど変えずに電子処方箋を導入することができています。具体的に変更になった作業としては、医師が処方時にパソコン上で紙か電子かを選ぶことと、HPKIカードを認証するためにカードリーダーに載せることが追加されただけです。そのため、特段の負荷をかけることなく従来の業務フローの中に組み込むことが出来ました。当院だけではなく、他の施設においても、既に電子カルテシステムやオーダリングシステムで処方箋を発行する仕組みを導入している医療機関であれば、電子処方箋の運用は難しくないと思います。

経営企画室長の有賀直明さん。

電子処方箋画面。

実際に運用を始める前に、どのような準備をしましたか?

運用を開始する前に、一部の職員にデモ患者になってもらい、実際に受付から処方までの流れを診療科ごとに実機を使って説明しました。説明を受けた職員には、導入後の業務フローが導入前とほとんど変わらないことや、工数が増えるわけではないことなどを理解してもらっていたので、運用開始後もスムーズに電子処方箋の発行数を伸ばしていけたのかと思います。また、新患の方が最初に新患申込用紙を記載するための記載台に顔認証付きカードリーダーを設置したり、マイナ受付の場合は新患申込用紙の記載項目を簡略化したり等の工夫を凝らして、初めて当院を訪れる患者さんにも、スムーズにマイナ受付や電子処方箋の選択を試していただける導線を整えました。

新患申込用紙を記載する記載台に設置した、顔認証付きカードリーダー。

操作の様子(医師の今泉博道さん)。

運用開始後の変化や効果について

運用開始後、患者さんへの周知はどのように行っていますか?

厚生労働省の作成したポスターの掲示や、デジタルサイネージの設置などの院内での啓発に加えて、病院のホームページや公式LINEなどの媒体を用いた情報発信を当院として積極的に行っています。 また、運用するなかで患者さんへの周知に関する課題があれば、解消できるような周知物を独自に作ることもあります。例えば、顔認証付きカードリーダーの使い方に戸惑いやすい高齢の患者さん向けに、独自にマイナ受付の方法を説明する動画を作成したり、「電子処方箋で発行してもらうために何をすればいいか分からない」という声を受けて、電子処方箋を希望する際はマイナ受付時に選んでもらうか医師に直接伝える必要があることや、電子処方箋に対応している周辺の薬局名を明記し、患者さんが参考にできるリーフレットを作成したりもしました。最初から完璧な周知物を目指すのではなく、小規模でも良いので、色々な周知方法に積極的にチャレンジしていくのが重要だと考えています。

厚生労働省作成のポスター(電子処方箋の周知・案内等の素材は、 厚生労働省HPよりダウンロードしご活用いただけます。)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/denshishohousen_sozai.html

総合案内付近のサイネージで利用を訴求。

受付の顔認証付きカードリーダーの付近にもリーフレットを設置。

病院ホームページでも電子処方箋を紹介。
https://www.iwase-hp.jp/outpatient/denshisyohousen.html

病院の公式LINEアカウントでは利用方法動画を発信。

電子処方箋を導入した効果を実感していますか?

実際に、電子処方箋を利用している医師のうち、重複投薬等チェックでアラートが出たために処方をやめたケースがありました。お薬手帳を何冊もお持ちの患者さんもいらっしゃいます。診療時に持参いただいていないお薬手帳に書いていることも含めて隅から隅まで見ないと分からなかったことが、簡単にチェックできるようになりました。また、電子処方箋になって調剤結果のデータが送られてくるようになったことで、成分名で処方したお薬が、最終的にどの薬剤で調剤されたかを確認することができ、次回診療の計画を立てられるようにもなりました。電子処方箋の運用は難しいといった話も聞きますが、当院では業務フローをほとんど変えていないこともあり、実際の作業工数は増えていません。そのため、工数を増やすことなく、診療サービスの向上が実現できていると感じています。

今後の導入施設の拡大や、電子処方箋への期待

電子処方箋の導入推進に関して、実施していることや、これから実施したいと考えていることはありますか?

地域の中核病院として、薬剤師会を通じて地域の薬局へ電子処方箋の導入を依頼しています。導入当初は2薬局、その後須賀川地域でモデル事業に参加したなかでは10薬局が導入を開始してくれました。電子処方箋は、対応施設が面で広がって多くの患者さんのデータを蓄積することでより効果を発揮します。須賀川地域には31の薬局があるので、これから更に電子処方箋対応施設が増えてほしいと考えています。

院内でも、患者さんへお薬情報の提供への同意を呼び掛けている。

今後、電子処方箋の拡大に期待することはありますか?

今後、医療DXの観点からも、データの電子化は鍵になると考えています。例えば、今後電子化がさらに進んで、スマートフォンで処方データの閲覧ができるのはもちろん、スマートフォンから調剤薬局にデータが送信できるようになれば、薬局での待ち時間も減るなど、医療機関・薬局・患者さんの三方にとって使い勝手はさらに良くなるのかと思います。近い未来に、患者さんのお薬の情報が蓄積されてより正確で安心な医療が提供できるようになるためにも、他の医療機関にも是非積極的に電子処方箋を導入して医療DXを促進していただきたいと思っています。

公立岩瀬病院

〒962-8503福島県須賀川市北町20

TEL:0248-75-3111(代表)

https://www.iwase-hp.jp/

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