
病院の事例
マイナンバーカードと診察券の一体化後に、
マイナ保険証利用率が1ヵ月で5.5%上昇。
患者の利便性向上と業務効率化のために、医療DXを積極的に推進
国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院 2025年12月掲載
国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院(以下、千葉大学医学部附属病院)は、特定機能病院として高度医療を提供し、周辺の医療機関と連携して地域医療を支えています。大学病院として診療のみならず教育や研究も担っていることから、組織全体として業務効率化やシステム化のニーズが大きく、医療DXに積極的に取り組んでいます。
マイナンバーカードと診察券を一体化した背景
今後、国が推進する医療DXに対応していくにあたって、マイナ保険証の利用者数を増やすことが必要であると考えたからです。オンライン資格確認や電子処方箋をはじめ、当院がモデル事業に参画している電子カルテ情報共有サービスにおいても、患者さんにマイナ保険証をご利用いただくことが前提の仕組みとなっています。これらのサービスが障壁なく使えるようになると、ゆくゆくは患者さんの利便性を高めることにも繋がるため、どうしたらマイナ保険証の利用者を増やせるか、常に考えていました。また、令和6年度診療報酬改定で追加された「医療DX推進体制整備加算」の要件である「マイナ保険証利用率」が今後引き上げられていくであろうことも、もちろん念頭にありました。
そんな中で選択肢にあがってきたのが、マイナンバーカードと診察券の一体化です。患者さんの動線を考えた際に「診察受付の時点でマイナンバーカードが使えるようになれば、マイナ保険証を使う患者さんが増えるのでは?」と思いました。既に一体化した仕組みを導入している医療機関があることは以前から知っていたのですが、実際にマイナンバーカード1枚で受付から患者さんの資格情報の確認まで行える再来受付機を展示会で見たときに、「これしかない」と思いました。 補助金があることも大きな後押しになり、2024年の秋ごろから具体的に再来受付機の購入等の検討を始め、2025年3月末から運用を開始しています。

千葉大学医学部附属病院 病院長企画室・特任講師 兼 企画情報部・副部長の土井俊祐さん。
マイナンバーカードと診察券の一体化による変化と効果
当院には1日あたり約2,500人の外来の患者さんが来院されており、現在(2025年8月時点)のマイナ保険証の利用率は約59%となっています。マイナンバーカードと診察券の一体化後の1ヵ月間で、マイナ保険証利用率は5.5%上昇しました。4月以降もマイナ保険証の利用率は上がり続けており、今後さらに上昇していくものと期待しています。
まず、患者さんの手間が減りました。これまで、マイナ保険証をご利用いただく場合は、「再来受付機」で「診察券」を使って受付をした後に、別の場所に設置されている「顔認証付きカードリーダー」に「マイナンバーカード」を通して資格確認の手続きを行っていただく必要がありました。しかし、現在は「再来受付機」に「マイナンバーカード」を通すだけで受付と資格確認の手続きの両方を一括で完了できるようになりました。
実は医事課では、資格確認の手続きで使用する顔認証付きカードリーダーの設置場所の案内方法に頭を悩ませていました。広い院内では、カードリーダーの存在があまり目立たないようで、大きなポスターを貼っていてもカードリーダーに気づかない患者さんも多くいらっしゃいましたが、思いがけずこの問題も解消できました。
さらに、スタッフによる健康保険証確認の手間も明らかに減っています。これまでは、患者さんが紙の保険証を利用している場合、再来受付機で診察券を通した後、外来で保険証を提示していただく必要がありました。そのため、紙の保険証を確認するためのスタッフを外来の各フロアに配置していたのですが、マイナンバーカードと診察券の一体化によってマイナ保険証の利用率が上昇し、確認作業が必要な患者さん自体が減っています。運用開始から間もないこともあり、まだ人員削減には至っていませんが、例えばコアタイムに2名配置していたスタッフを、より早い時間帯から1名に減らせるようになり、手の空いたスタッフは別の業務に回ることができています。今後、マイナ保険証の利用者がさらに増えれば、より一層の効果が上がるものと期待しています。
理解してくださる患者さんが多く、大変ありがたいと思っています。「別の場所でマイナンバーカードを通す必要がなくなり手間が減ったね」という声をいただいたり、今回の変化を前向きに捉えてくださり、「時代が変わるね」と言ってくださる患者さんもいらっしゃいます。
一方で、導入当初は慣れない患者さんも多く、診察券のみでの受付より長くお待たせしてしまう場合も多くありました。誘導や案内掲示などを日々工夫しながら、なんとか患者さんにも早くこの仕組みに慣れていただけるように対応しているところです。

マイナンバーカードと診察券の一体化のプロセスについて
まず、再来受付機を刷新し、マイナ保険証確認と再来受付が一体となっている機種を導入するところがスタートでした。従来使用していた再来受付機は、顔認証付きカードリーダーと連携する機能を持っていなかったので、これは大きな決断でした。
機種変更に伴い、再来受付機のメーカーさんが変わりましたので、再来受付機と電子カルテや医事システムとを改めて連携させる必要がありました。電子カルテや医事システムのベンダーも対応経験がなかったようですが、今後必ず必要となる仕組みであることを説明したところ、積極的にご協力いただけることになりました。再来受付機との連携アプリケーションについても、一から開発していただいたことで、新たな再来受付機を無事導入することができました。発注から導入完了までの期間は3カ月半ほどでした。
実際の開発・導入作業そのものはシステム事業者におまかせしたため、当院としては大きな作業は発生していません。ただ、患者さんにとってわかりやすく、できるだけ少ない手順で受付が行えるように、連携アプリケーションの開発にあたり、当院から画面の案内や表示位置の調整等を細かく要望しました。運用開始後も、患者さんから「暗証番号を押すボタンが小さい」とのお声をいただいたことを受け、ボタンを大きくしてもらえるよう依頼するなど、試行錯誤しながら調整をしております。
システム・運用の両面でいくつか課題が発生しました。
例えば、受付の際にマイナンバーカードと診察券の両方を入れてしまう方がいたり、カードの受け取りを忘れてしまったことで次の患者さんが正しく受付が出来なかったりするケースが発生しました。導入後しばらくの間は、当院企画情報部や医事課・その他関連部署を含めてシステム事業者と情報共有し、対応を相談することで、ひとつずつ不具合を解消していくことができました。運用開始直後は、システム業者が再来受付機の近くで立ち会ってくれたため、問題が発生したときにも直接対応してもらうことができました。
一体化後すぐは、長い行列ができてしまうなどのトラブルもありましたが、患者さんが滞留しないための動線づくりや案内スタッフの配置場所など、スムーズな運用ができるように試行錯誤しました。現在では、患者さんが慣れてきたこともあり、そのようなことはなくなっています。

職員や患者への周知の工夫
新しい再来受付機が院内に導入された段階で、職員に対して説明会を開催し、システム事業者に使い方をレクチャーしてもらいました。また、運用開始後も問題発生時の対処方法などを医事課や医療サービス課が整理・共有し、何かあったときに窓口で対応する職員が困らないようにしています。こうした取り組みによって、今では問題なく運用できています。

運用開始前に、当院のWebサイトにお知らせを掲載しました。また、患者さんには「マイナンバーカードで受付をすると健康保険証を出す手間がなくなるので、次に来院されるときには、ぜひマイナンバーカードを持参してください」と職員から直接、ご案内しました。
その他、院内にポスターを貼り、デジタルサイネージでも「マイナンバーカードで手続きできる再来受付機に変わります」と案内も行いました。再来受付機の見た目などが変わることに驚かれる患者さんが多いだろうと考え、「診察券との一体化」というよりは「再来受付機での手続きの変更」を主軸にしたメッセージを出すよう工夫しました。運用開始日からは、再来受付機の上に目立つようにオレンジ色の横断幕も掲示しています。
なお、当院では、運用開始から4週間ほど、再来受付機の横にスタッフを2名配置し、患者さんへのご案内やサポートを行っていました。これは企画情報部や医事課だけでなく、他のさまざまな部門のスタッフにも持ち回りで協力してもらいました。現在では、患者さんが操作に慣れてきたこともあってスタッフは配置していません。ただし、何かあった際には、院内ボランティアの方や総合案内のスタッフで対応できるようにし、医事課に情報共有してもらうといった体制を整えています。

今後の展望
当院では、医療DXを推進することで、診療業務に限らずあらゆる業務を効率化し、スタッフの残業時間を削減するなど、職場環境をより良くしたいと考えています。当院は地域の中核となる大学病院ということもあり、周囲の医療機関は当院の動向を見ながらシステム導入を検討している面もあると伺っています。医療DXは当院のみで進めても意味がありません。当院が率先して医療DXを推進することで、地域の医療機関に波及し、ひいては地域全体の医療DXが進むようにリードしていきたいと考えています。
最近では、新しい診療予約システムや、外部の医療機関と医療情報や画像を連携する仕組みなども導入しています。患者さんに、より便利に受診いただけるよう、引き続きDXの取り組みを進めていきます。本年9月からスマートフォンでのマイナ保険証利用が開始されておりますし、最終的には医療機関におけるあらゆる手続きがスマートフォン1つでできるようにしたいですね。

国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院
〒260-8677 千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1
TEL:043-222-7171
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