施設間連携

地域一体となった円滑な運用のために、
周辺施設と密な情報共有を実施。
現行業務に沿った業務フローにより負担の無い運用を実現

福島県須賀川地域(須賀川市・岩瀬郡鏡石町)では、2023年8月末時点で、医療機関2施設と薬局15施設が電子処方箋を導入しており、なかでも、さくら薬局 須賀川北町店とアイランド薬局 須賀川店は早期に電子処方箋の運用を開始しています。両薬局は、公立岩瀬病院の近くに店舗を構え、須賀川地区でかかりつけ薬局を担っています。電子処方箋の導入からこれまで運用してきた中で実感した、電子処方箋を導入したからこそ得られた効果や、今後の拡大に向けた期待について、両薬局からお話を伺いました。

運用開始までの流れ

実際に運用を始める前に、どのような準備をしましたか?

さくら薬局:
職員には、厚生労働省が公開している資料を読み込んでもらうことで概要は理解してもらえました。自施設のレセコンの仕様と合わせた運用フローに落とし込む点では、多少試行錯誤しましたが、システム開発担当者と連携を取りながらフローを取りまとめ、既存の業務とほとんど変えることなくできたため、大きな混乱なく運用できています。

クラフト株式会社第一営業部課長の鈴木裕介さん(さくら薬局 須賀川北町店)。

アイランド薬局:
近隣の病院で、病院の職員をデモ患者として実際の電子処方箋を発行いただきました。それを使って、職員全員で集まって調剤データの登録や送信などの工程を確認しました。システムの操作自体は難しくないので、職員だけでもスムーズに理解できました。

アポクリート株式会社薬局事業本部第二事業部福島第四ブロック長の中里見裕哉さん(アイランド薬局 須賀川店)。

電子処方箋を導入したことで、業務の流れや負荷に変化はありましたか?

さくら薬局:
受付やデータの入力作業、HPKIカードの認証作業などは多少変わりましたが、基本的な業務自体が大きく変わったわけではないので、今までの業務の延長線上で行うことができています。電子処方箋の導入を迷っている薬局の中には、業務のイメージが付かないが故に非常にハードルを感じている施設もあるのかもしれませんが、どの施設でも導入前後で業務内容はそこまで変わらないと思います。

さくら薬局須賀川北町店から薬局長の神垣昌幸さん(さくら薬局 須賀川北町店)。

HPKIカードのカードリーダー。調剤結果登録時、認証中にカードがズレると認証されないため、クリップを活用してカードを一時的に固定して使用。

カードリーダーでHPKIカードを読み込んだ後にPIN入力することで電子署名が完了する。

運用開始後の変化や効果

運用開始後、患者さんへの周知はどのように行っていますか?

アイランド薬局:
まずは、ポスターなどの掲示物で啓蒙して、興味を示された患者さんには電子処方箋のメリットなどを説明するようにしています。「お薬のデータが蓄積されることで、より安全にお薬が飲めますよ」とメリットを説明すると、特に患者さんの反応が良い印象です。病院で医師から説明を受けて興味を持たれた患者さんもいるので、患者さんへの周知には病院側の協力も必要だと感じています。

検温器の正面や受付横、待合スペースにポスターを掲示。

電子処方箋の周知・案内等の素材は、 厚生労働省HPよりダウンロードしご活用いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/denshishohousen_sozai.html

運用開始後、地域の医療機関・薬局との連携はありましたか?

さくら薬局:
お隣の公立岩瀬病院とアイランド薬局須賀川店と、地域としての円滑な運用に向けた情報共有のために3施設定例会を実施していました。そのなかで、患者さんへの対応の見直しにつながったことがありました。具体的には、病院を受診後に当薬局に来局した患者さんのなかに、電子処方箋を選択したら事前に処方箋データが薬局に送付され調剤されると勘違いしていた方がいたため、病院側・薬局側でどのように対応すべきかを検討しました。最終的に、病院側で患者さん向けに電子処方箋の仕組みを説明するチラシを作成して周知してもらうことになり解決しました。地域一体となることで、円滑な運用につながると思います。

アイランド薬局:
運用開始初期は、エラーが発生した際に、3施設定例会で当施設だけのエラーか、さくら薬局でも発生しているエラーなのかを確認させてもらえたことで、原因の切り分けに繋がり大変助かりました。また、地域の薬剤師会を通して他の電子処方箋対応薬局とも連携を取ることで、地域で事例の共有も行っています。電子処方箋に関する連携を行った結果、施設同士のコミュニケーションが円滑になって電子処方箋に関すること以外でも気軽に話を聞きに行けるようになったと感じています。

電子処方箋を導入した効果を実感していますか?

アイランド薬局:
導入した効果を最も感じるのは、重複投薬等チェックができるようになった点です。当薬局だと月に1,2件の重複投薬を未然に防げています。例えば、下痢止めの調剤をしようとしたところ他薬局で同一成分の薬が調剤されていることが重複投薬等チェックで発覚し、当薬局での調剤を取りやめたケースがありました。これまではお薬手帳を見返したり患者さんにヒアリングしたりしないと分からなかった重複投薬が、アラートひとつで気付けるようになったのは大きな効果だと思います。

重複投薬等チェック画面。

さくら薬局:
当薬局では、導入当初、いつもは違う薬局でお薬をもらっているが、電子処方箋に対応していたから当薬局に来たというケースが1日に5件程ありました。周辺の薬局が導入していない地域で率先して導入すれば、患者さんの獲得や知名度の向上にも繋がる可能性があるので、まだ導入していない薬局はビジネスチャンスと捉え、導入しても良いのではないでしょうか。

今後の導入施設の拡大や、電子処方箋への期待

今後、電子処方箋の拡大に期待することはありますか?

アイランド薬局:
電子化が更に進むことを期待しています。薬局は小さな施設が多いので、データで管理できるようになることでペーパーレス化にも繋がり、処方箋の保存に関する負担がだいぶ軽減されると考えています。また、地域の特性として東日本大震災や台風による大雨を経験している我々からすると、データがクラウド上に残ることで、災害時でも、直近に処方されたお薬を含めた過去のお薬情報等を確認して安心して調剤できるようになると期待しています。

さくら薬局:
今後、電子処方箋とオンライン服薬指導との掛け合わせが浸透することで、患者さんが物理的な距離に縛られることなく、個人のニーズに合わせてがんや腎臓など特定の分野に強い薬局を選べるようになることを期待しています。今は医療機関や自宅の近くでかかりつけ薬局をもちますが、電子処方箋によって症状に特化した薬局を選ぶことが薬局選びの新たな選択肢になり、薬局の役割も変わっていくと思います。

これから電子処方箋の導入を検討する(している)施設へのメッセージ
さくら薬局:
今後医療機関で電子処方箋の導入が進んだ際、薬局で電子処方箋が導入されていないことを理由に、患者さんが本当に行きたい薬局に行けなくなるケース出てくる可能性が考えられます。これは患者さんに大きな負担を与えるので、薬局が絶対に避けなければならない事象です。患者さんに高い安全性を担保するためにも、地域一体となってお薬の情報を蓄積することで、電子処方箋の効果を最大限得られるように、未導入の薬局には積極的に導入を検討してほしいです。

さくら薬局 須賀川北町店

〒962-0856 福島県須賀川市北町10-1

TEL:0248-72-3121

https://www.kraft-net.co.jp/sakura/store/3755/

アイランド薬局 須賀川店

〒962-0856 須賀川市北町9

TEL:0248-72-1189

https://www.apocreat.co.jp/pharmacy/

その他の導⼊事例

  • 電子処方箋により地域全体で患者を支える医療サービスを。病院と薬局との間で積極的に情報共有を行い、地域内の連携も強化

    広島県安佐地域 (2023年2月掲載)

    広島県安佐地域では、2023年1月20日時点で医療機関5施設と薬局17施設が電子処方箋のシステムを導入しています。地域における電子処方箋の導入は、どのように進められたのでしょうか。また、導入によって、地域医療への貢献や連携の強化などの変化はあったのでしょうか。病院・薬局それぞれの視点で、広島市立北部医療センター安佐市民病院薬剤部薬剤主任部長の宮森伸一さん、びーだま薬局の管理薬剤師で安佐薬剤師会会長の下田代幹太さん、日本調剤株式会社広島支店薬剤部薬剤一課課長の中原千彰さん、日本調剤 安佐北薬局店舗責任者で管理薬剤師の立石朝香さんにお話を伺いました。
    ※文章中、敬称略。

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    福島県須賀川地域 (2023年9月掲載)

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