医科診療所

日本の医療DXの未来を見据え、率先して電子処方箋を導入。
重複投薬等チェックによる過剰投与のリスク軽減を実感

吉川クリニック 東京都文京区

東京都文京区の吉川クリニック(心療内科・精神科・児童精神科)では、周辺の医療機関が電子処方箋を導入する動きが見えないなか、医療DX促進の第一歩として、率先して電子処方箋の運用を開始しました。

運用開始までの流れ

電子処方箋の導入に至った背景や経緯について教えてください

従来から、日本の医療DXの遅れに危機感を感じていたからです。医療現場では、通常業務の中で紙を使うことがまだまだ多いため、電子処方箋を導入することで、お薬の情報をデータとして正確に管理できるようになることや、余計な事務作業が無くなって患者さんと向き合うことに時間が割けるようになるのではないかと感じています。より良い医療を患者さんに提供するために、各医療機関の垣根を越えて、医療従事者同士が患者さんの情報をシェアすることは今後必要になると思います。電子処方箋は、そんな医療DXの第一歩だと確信しています。

院長の吉川和男さん。

導入する際の課題やハードルはありましたか?

特にありませんでした。当施設のシステムでは、パソコン内のソフトをアップデートするだけで完了しました。アップデート費用も特にかからず、電子処方箋を導入するためにかかった費用は、HPKIカードの申請費用とHPKIカード読み取り用のICカードリーダーの購入費用だけだったので、オンライン資格確認等システムを導入した時よりも、安く簡単に導入できたと感じています。電子処方箋の使い方も、システム業者から共有されたマニュアルを見ればすぐに理解することができました。

電子処方箋は画面上の該当箇所にチェックをいれるだけで発行できる。

電子処方箋を導入したことで、業務の流れや負荷に変化はありましたか?

発行する処方箋として電子処方箋を選択する操作が増えた程度で、これまでの業務とほとんど変わりなく運用することが出来ています。電子処方箋を発行する場合、従来の記名・押印に代わり、HPKIカードを用いて電子的に署名する必要がありますが、HPKIカードをICカードリーダーにセットしておき、1日のなかで最初に電子処方箋を発行する際に1回だけPINを入力すれば本人認証が完了します。当日中は再度認証作業をすることなく、電子処方箋を発行することができます。そのため、電子処方箋を運用するために業務が増えた感覚はありません。むしろ、当施設は医師が一人のため記名・押印をするよりもクリックで済むので手間が減ったと感じています。また、患者さんに処方箋を手渡す受付担当者向けの研修も特に実施していませんが、処方内容(控え)は判子を押さないものだということだけを伝えただけで、滞りなく運用できています。

ホルダーつきのHPKIカード用カードリーダー。

普段はデスク下に置いている(左下部)。

運用開始後の変化や効果について

運用開始後、患者さんへはどのように案内を行っていますか?

診察中に、患者さんにいつも調剤を受けている薬局を確認し、電子処方箋に対応しているお隣の薬局に通われている患者さんには電子処方箋を案内し、それ以降電子処方箋を発行し続けています。しかし、周辺で電子処方箋に対応している薬局がその1施設しかないので、その他の患者さんには基本的に紙の処方箋で発行しています。電子処方箋システムを導入さえすれば、紙で発行したとしてもお薬の情報は蓄積され、医療従事者間で患者さんの情報を共有することができるので、まずはシステムを導入することが大切だと思います。

顔認証付きカードリーダーでは処方箋の発行形態選択画面をなくし、診察時に口頭で確認している。

精神科だからこそ得られる電子処方箋導入のメリットがあれば伺えますか?

精神科では、投薬日数に上限がある依存性の高い薬を扱うことも多いので、電子処方箋を導入し、重複投薬等チェックが働くことで、より安全な医療を提供できることにメリットを感じています。また、睡眠薬等についても、なかには複数の医療機関で意図的に同じ薬を処方してもらい悪用する人もおり、重複投薬等チェックによってこうした事案を防ぐことができるので、電子処方箋は精神科にとって非常に有益だと感じています。いまは、周辺の医療機関が電子処方箋を導入していないため、自施設での過去の処方と重複が無いかをチェックするだけに留まっていますが、オンライン資格確認における薬剤情報閲覧によって、他院との重複が判明して処方を変えた例もあります。今後、導入施設が増えて薬歴が蓄積されることで、より簡単で確実に他の施設の処方情報との重複投薬等チェックができるようになることに期待しています。

今後の導入施設の拡大や、電子処方箋への期待

今後、電子処方箋の拡大に期待することはありますか?

医療DXが進み、処方・調剤情報だけではなく、診療情報等の様々な医療情報がデータとして共有される未来がきてほしいと思っています。そうすれば、新しい患者さんが過去にどこの医療機関でどういった治療を受けていたかなども把握でき、より良い医療が提供できると考えています。また、感染症が蔓延して来院できなかったり、災害が発生してお薬手帳を紛失したりしても、患者さんの情報をいつでもどこでも正しく把握できます。患者さんに安心して医療を受けてもらうために、電子処方箋だけでなく、その先の医療情報のデータ共有は必須だと思います。

電子処方箋の登録完了画面。

これから電子処方箋を導入する施設や、導入を検討している施設へのメッセージ

自施設だけで患者さんの医療情報を保持しているよりも、他の医療機関と共有することで、より良い医療の提供に繋がることについては、多くの医療従事者が理解していただけていると思います。多くの医療従事者に使ってもらうことで、電子処方箋の効果やサービスも成長していくと思います。これ以上他の施設に乗り遅れないためにも、導入を検討されている施設の方々には、まずは躊躇せず導入して使ってみてほしいです。

吉川クリニック

〒121-0001東京都文京区白山5-36-9 白山麻の実ビル4階

TEL:03-5840-5677(代表)

http://www.yoshikawa-clinic.jp/

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