病院
医療とDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進。
オンライン資格確認による受付業務を抜本的に見直し、効率化
北野病院 大阪府大阪市北区
北野病院は、医学研究所の機能を持ち、許可病床数685床、1日1,500人前後の外来患者が訪れる総合病院です。京都大学医学部とともに地域医療の中核を担い、高度医療の導入と医学研究の発展にも積極的に寄与しています。
オンライン資格確認を導入した理由
医療業界は特殊な領域で、個人情報もより厳密な管理が求められる中、DX化は他業界に比べても立ち遅れている感があります。とはいえ、できるところから積極的に自動化を行い、効率化を図っていくことが必要だと考えており、当院では、2021年1月に新館の稼働開始を契機に、ロボティック・プロセス・オートメーション(業務プロセスを自動化する仕組み(以下「RPA」))を導入した医療業務のフロー改善に着手しました。そういった背景もあり、オンライン資格確認の導入はその一環と位置づけて導入しました。これまで手動で行っていた受付業務をRPAを用いて自動化すれば、オンライン資格確認のメリットをより効果的に享受できるだろうと考えました。
当院は幅広く診療科がそろい、救急患者の受け入れも行っており、1日の外来患者は1,400人から1,600人を超えることもあるため、オンライン資格確認については、予約患者の資格確認を事前に一括で行うことができる点に最も魅力を感じました。従来の健康保険証を預かって目視で内容確認し、変更内容の入力やダブルチェックでは、患者本人の提示漏れや、登録の誤りを完全に防ぐことは難しく、レセプト返戻の数を一定数から減らすことができないのが現状でした。
オンライン資格確認の導入によって手動での確認の手間を削減し、返戻率の改善にもなるのであれば、それだけでも価値があると考えて導入を決めました。
北野病院診療サービス課課長の森田心さん。
当院で採用しているレセプトコンピューターのシステム業者に相談し、こちらでやらなければならない手配や作業も、システム業者が的確に指示をしてくれたので、つまずくことはほとんどなく準備を進めることができました。
唯一、回線環境の整備の際、IP-VPN接続方式を導入してIPv6に切り替えなければならなかったところが抜けていて、導入時に接続できないということがありましたが、これもシステム業者のアドバイスによりすぐに原因が判明したため、システム業者にとにかく相談して任せるのが良いと思います。
顔認証付きカードリーダーの設置場所については、オンライン請求回線との接続の兼ね合いもあり、当院の場合はちょうど初診受付の奥にオンライン請求用パソコンを設置していたため、オンライン請求回線の配線工事を伴わない範囲ということで、必然的に置き場所は初診受付に決まりました。今後、再診受付や各階受付にも設置を拡大していくことを検討しているため、配線をどうするか改めて検討しなければならないですが、とにかく始めようということであればオンライン請求用パソコンを設置している付近に顔認証付きカードリーダーや資格確認用パソコンを設置すると配線工事等を抑えることができるのではないかと思います。
オンライン資格確認導入後の日常
再診の患者さんについては、翌日の予約患者の資格確認を一括で行っています。病院で登録している資格情報とオンライン資格確認による情報が一致しない場合に、該当する患者さんに対して、再診の際に受付機で「健康保険証の確認をお願いします」というメッセージを示し、「資格確認コーナー」へ誘導します。そこで職員が新しい健康保険証を確認し、資格確認を実施します。
マイナンバーカードについては、患者さんが健康保険証を忘れた際に、代替手段としてマイナンバーカードでも資格確認ができることを案内しています。
初診においては、初診受付に顔認証つきカードリーダーを設置し、患者さん本人から申し出があればマイナンバーカードを使用していただいて資格確認を行っています。現在は健康保険証を用いた資格確認をベースにしているため、患者さんの動きに目立った変化は今のところはありません。
北野病院医事課係長の篠田佳幸さん。
各受付やエレベーター前など、患者さんの動線に合わせて目につく場所に「マイナ受付可能」のポスターを掲示しています。
患者さんがマイナンバーカードを利用するケースがまだ多くはありませんが、健康保険証情報による資格確認でも十分にメリットがあるため、健康保険証を忘れた際の代替手段としてマイナンバーカードを持っているかを確認するくらいでまずは運用しています。
オンライン資格確認導入後の変化
まず初診時の健康保険証の情報登録については、これまでは目視によるダブルチェック、一時はトリプルチェックまで行っていましたが、その手間は大幅に軽減されたうえに正確性も保たれるようになりました。
次に、再診時の資格確認についても、予約患者については前日に一括確認を行い、確認が必要な患者さんだけを抜き出してフォローする流れに変えました。患者さんに健康保険証の再提示をお願いする対象は、体感として以前は数百人だったものが、数十人にまで減らせることができています。従来は再来受付機の脇に「健康保険証確認コーナー」を設けて2名の職員を配置し、資格確認を行っていましたが、この人員配置も将来的には削減できそうです。
さらに、資格過誤によるレセプト返戻率も低下しました。オンライン資格確認の本格運用開始が2021年10月20日からでしたが、2021年10月に比べ、11月以降の平均返戻率は5分の1程度にまで抑えられています。
※オンライン資格確認の対象外である公費等の情報による返戻が数件発生。
レセプトコンピューターにRPAを導入し、オンライン資格確認システムとの連携に向けて取り組んでいます。一括照会機能を用いて事前に予約患者の資格確認を行い、資格の変更有無の確認を行っていますが、一括照会で確認した結果をレセプトコンピューターの各患者さんの情報にも自動連携できるような仕組みを構築中です。自動連携することで、受付担当者での取り込み作業等も削減することができ、より業務の効率化に繋がると考えています。
オンライン資格確認による効果
これまで資格確認の一連の業務は人の手を介して行っていました。そのため、登録間違いや患者さんの保険証提示忘れなど、ヒューマンエラーが起こりやすいポイントがいくつもありました。初診受付や再診受付、その次の各科受付も間違ったまま通過してしまい、会計時に発覚するとなると、レセプトの修正はもちろんのこと、当院では診療時に処方箋をその場で発行するため、保険証の情報を変更する必要があると処方箋の出し直しも発生してしまう、といった労力も発生します。オンライン資格確認を導入したことで、ヒューマンエラーの起こる余地を取り除くことができ、業務の効率も向上し、患者さんに対しても返戻などで迷惑をかけることも少なくなります。
患者さんの住所や高額療養費の上限額もあわせて把握できるのは、導入前にはさほど意識していませんでしたが、実際に運用してみて業務上、大きなメリットでした。
未収の場合や、今のようなコロナ禍ではしばしばあるのですが、検査をしてそのまま帰宅し後日請求をする場合などは、当院ではまず郵送で文書を送ります。その際、登録されていた現住所が間違っていて返送されてくるケースも少なくないです。オンライン資格確認結果として返ってくる住所情報は、そういったケースにおけるリスクヘッジとして有用だと思います。
高額療養費の上限額については、患者さんの同意を得ることで限度額適用認定証をわざわざ取得手続きをしていただくことなく、適用区分の確認ができるようになります。患者さんにとっても手間が省けるメリットがありますし、緊急入院や救急で認定証をとる時間もないような場合にも、オンラインで確認できるのは助かります。
当院では、診察申込書や入院時の説明文書において、オンラインで限度額情報を取得することに対する同意欄を設けています。同意についてはレセプトコンピューターで患者情報とともに記録しており、その後の確認がスムーズになりました。
オンライン資格確認の導入によって、ヒューマンエラーを防ぐことができて業務改善という成果が出ていますし、人的コストの削減という数字面でもメリットが実感できています。導入の価値は十分にあったと満足しています。 また、オンライン請求回線の配線も工夫したことでほとんど費用も発生せず、レセプトコンピューターの改修費用もきちんと内訳を確認しながら交渉したことで補助金の範囲内に収めることができています。
公費に関する情報の追加を待ち望んでいます。当院でいえば約3割の患者さんが公費を利用しています。健康保険証の資格確認に加えて公費情報も資格確認ができるとよりメリットに感じます。
オンライン資格確認の利便性は導入してみて実感しているところですが、患者さんに対する周知や動線の設計など、これから取り組むべきことは山積しています。今後、RPAやオンライン資格確認を最大限有効に活用しながら、患者さんの動線の見直しなども抜本的に取り組んでいく予定でいます。オンライン資格確認やマイナンバーカードによる認証システムも、これからさらに機能が充実してきますが、すべてが出そろうのを待つことはせず、未来を見据えて今できることに取り組んでいこうという考えで実行に移しています。
北野病院
〒530-8480 大阪市北区扇町2-4-20
TEL:06-6312-1221
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牧田総合病院は、1942年の開業以来、地域に根ざした医療を提供してきました。現在は「すべての人に安心を」をビジョンに掲げ、290床を備える急性期病院として幅広い医療ニーズに対応しています。救急医療にも力を入れており、地域の安心に貢献するべく「断らない救急」を目指しています。