薬局

本社は店舗での運用を支援し、
店舗では患者さんに寄り添った対応につとめる。
全社的な取り組みによって、マイナ保険証の利用率向上を実現

日本調剤 真岡薬局 栃木県真岡市

日本調剤株式会社は、1980年に設立された保険薬局チェーンで、全国47都道府県に730店舗(2024年1月1日時点)を展開しています。医療のDX化に力を入れており、オンライン資格確認も早期に導入しました。本社と各店舗がさまざまな取り組みを行い、マイナ保険証の利用率向上に努めています。それぞれの取り組みについて、日本調剤株式会社薬剤本部薬剤管理部保険課課長の幸原文男さんと、日本調剤 真岡薬局主任・店舗責任者・管理薬剤師の野澤孝章さんに伺いました。

オンライン資格確認の活用の現状

オンライン資格確認を始めようと思ったきっかけは?

幸原文男さん(以下、幸原):まず、資格情報をその場で確認でき、レセプトの返戻が減ることで、事務スタッフの負担が軽減されることが、とても良いと感じました。また、薬剤師が診療/薬剤・特定健診等情報を閲覧できるようになることも非常に大きく、かかりつけ薬剤師としての機能をさらに強化できると考えました。当社では、オンライン資格確認の運用開始がわかった段階で導入を決めており、2021年3月のプレ運用の頃から少しずつ運用を始めていました。

日本調剤は現在、医療のDX化に注力しており、オンライン資格確認だけでなく、電子処方箋にもほぼ全店舗で対応可能な状態になっています。医療扶助のオンライン資格確認やPublic Medical Hub(PMH)へも今後対応する予定です。

全店舗でマイナ保険証の利用率を向上させるために、本社側で行ったことはありますか?

幸原:業務手順書にオンライン資格確認に関する内容を追加して、本社から全店舗に配布しました。具体的には、受付での業務手順として「マイナンバーカードの持参を確認する」ことを明記し、受付で処方箋を預かった際に、マイナンバーカードをお持ちかどうか必ず確認するように運用の流れを変えました。
また、受付時に確認したマイナンバーカードの持参状況や、次回持参していただくようにご案内したかどうかといった情報を、システム上で患者さんの情報と紐付けて管理できるようにしました。こうした取り組みによって、各店舗でマイナ保険証を利用してもらうことに対する意識付けができたのではないかと思います。

さらに、各店舗内に掲示するためのポスターを提供したほか、デジタルサイネージで情報を発信するよう各店舗に案内しました。

マイナ保険証の利用を促すための案内方法

店舗では、患者さんにマイナンバーカードを利用していただくためにどのような取り組みを行っていますか?

野澤孝章さん(以下、野澤):本社から案内されたことはすべて実施したうえで、本社から提供されたマイナンバーカードを利用するメリット等が記載されているポスターをA4サイズに印刷し、マイナンバーカードを持参していない患者さんに配布していました。導入当初は、そもそもなぜ薬局でマイナンバーカードを出すのかご存知ない患者さんが多くいらっしゃいましたが、マイナンバーカードを使うことのメリット等をまとめた物を配布することで、多くの方が、次の来局時にマイナンバーカードを持参してくれるようになりました。現在は、マイナンバーカードをご提示いただくことに対する理解が進んできたこともあり、ポスターの配布は終了し、「マイナンバーカードはお持ちですか」というお声がけのみを実施しています。

また、導入当初は、顔認証付きカードリーダーの使い方がわからない患者さんや、健康保険証との紐付けをしていない患者さんが多くいらっしゃいました。
そのため、顔認証付きカードリーダーの使用方法をまとめたPOPを顔認証付きカードリーダー付近に貼ることにしました。若い方などはPOPを見て、顔認証付きカードリーダーをご利用くださいます。POPを見ても使用方法がわからない方については、スタッフが1つ1つの手順を説明しながら、個別に使い方をご案内しています。ご案内が必要な方でも、一度ご案内すると、次からはご自身で顔認証付きカードリーダーを使える患者さんが多くなっており、きちんと時間を割いて丁寧にご案内することが大切なのだと思います。

オンライン資格確認の運用開始当初と現在で、マイナ保険証を利用する患者数に変化はありますか?

野澤:当薬局には1日100~120人ほどの患者さんが来局されます。運用開始当初は、マイナンバーカードを持参される方が少なく、マイナ保険証の利用頻度は非常に低かったのですが、現在は30%弱の患者さんがマイナ保険証を利用しています。

薬局は、病院やクリニックと異なり、もともと保険証を確認することは少なかったかと思います。そのような背景を踏まえ、患者さんにマイナ保険証の利用を促す際の苦労はありましたか?

野澤:たしかに、「今まで健康保険証を出さなくても良かったのに、なぜ毎回マイナンバーカードが必要なの?」といったご意見をいただくこともあります。そのような場合は、マイナンバーカードをご提示いただき、診療/薬剤情報などの閲覧に同意していただくことで、薬剤師が重複や禁忌などを確認できるようになり、今まで以上に安全にお薬を使っていただけるというメリットがあることを説明しています。また、24時間経つと情報を閲覧することができなくなるため、セキュリティ面でも問題がないということを合わせてお伝えしています。
依然として、セキュリティに関して不安をお持ちの患者さんが一定数いらっしゃいますが、そういった方に対してどこまでの情報を見ることができるのかをご説明することで、納得、安心してマイナンバーカードをご利用いただけていると思います。

診療/薬剤情報の活用方法

診療/薬剤情報は活用されていますか。また、どのような場面で役立っているでしょうか?

野澤:診療/薬剤情報は積極的に活用しています。マイナ保険証を利用した患者さんについては、診療/薬剤情報を必ず確認するようにしています。マイナ保険証を利用し、診療/薬剤情報の閲覧に同意した患者さんの処方箋に「マイナ確認」と記載した紙をクリップで留めることで、処方箋を見るだけで、マイナ保険証を利用した患者さんなのかどうか判断できるようにしております。調剤システム上でも色分けされるようになっているため、クリップがなくてもどの患者さんが同意したのかわかるようにはなっているのですが、見逃すことのないよう目印を付けています。

野澤:お薬手帳でカバーしきれていなかった情報を確認するのに役に立っています。例えば院内処方の薬は、お薬手帳に貼るシールが発行されない場合もあり、薬局で把握できないことがあったのですが、診療/薬剤情報を閲覧することで確認できるようになりました。また、退院時など処方のシールがお薬手帳に貼られていないケースがあったのですが、今は入院中の情報も閲覧できるようになっています。実際に、患者さんご本人の説明と診療/薬剤情報で閲覧した退院時処方に相違があり、問い合わせを行ったケースがあります。

また、現在受けている治療について薬局に伝えたくないという患者さんもいらっしゃるのですが、そうした際にも診療/薬剤情報の閲覧によって把握できることがあります。具体的には、診療/薬剤情報を閲覧したところ、透析を受けていることがわかり、そうであれば薬の量が多すぎるのではないか、と疑義照会を行ったこともありました。

本社で、各店舗の薬剤師に診療/薬剤情報を利用してもらうための取り組みを実施していますか?

幸原:当初は、診療/薬剤情報が閲覧できることを周知しても、あまり関心がない薬剤師も一定数おりました。まだ診療/薬剤情報のメリットを十分に見いだせていない部分もあったようです。そこで、全店舗に対してアンケートを実施し、薬剤師から具体的なユースケースやメリットを回答してもらいました。回答として多かったのは「重複投薬が判明した」「院内処方を把握できるようになった」「診療情報が閲覧できるようになり、どういった医療行為を受けているのかわかるようになった」といった内容でした。そして、このようなメリットを各店舗に共有することで、診療/薬剤情報が非常に重要かつ便利であることを周知しました。そうすることで、薬局にとって必要な情報なのだという認識が高まったように思います。

オンライン資格確認の今後の活用について

今後、オンライン資格確認に期待することはありますか?

幸原:薬局側としては、オンライン資格確認のメリットは非常に大きいのですが、患者さんは「従来の健康保険証の代わり」という認識しかお持ちでない方が、まだ多いように思います。健康保険証としての機能を果たすだけでなく、他にもさまざまなメリットがあることを、患者さんに積極的にわかりやすく発信していただけたらと思います。また、将来的にはマイナンバーカードだけでなく、スマートフォンでも利用できるようになることを期待したいです。

野澤:親御さんがお子さんの薬を取りにくる場合など、患者さんご本人が車の中など店舗の外にいらして、代わりにご家族が来局される場合があります。そうすると、据え置き型の顔認証付きカードリーダーでは、物理的にマイナ保険証の利用が困難になってしまいます。ポータブル式のカードリーダーなどが可能になると、すべての患者さんがマイナ保険証を利用できるようになるのではないでしょうか。

日本調剤 真岡薬局

〒321-4308栃木県真岡市中郷281

TEL:0285-80-8281

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